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【艦これ】なんでこんなことになったんだ!?【121】

 懐かしいな。

 降り頻る雨、雨、雨。

 一粒浴びれば紅蓮の炎を上げて身を焼き焦がす致死の|雨《爆弾》。

 掠ることさえ許されない地獄の豪雨を俺は走る。

 だけど上ばかり気にしてはいられない。

 海中を走る魚雷は鰯のように群れを成して俺たちに迫る。

 しかし俺が対処する必要はない。

「しゃらくさい」

 隣を行く大和が水中に向け斉射。

 放たれた砲弾は海を荒れ狂わせ迫る魚雷を誘爆させ道を作る。

 正直言う。

 腹立たしいほどに大和とはやり易い。

 瞬間最大火力なら大和にも勝てる自信はあるが、反して高い大火力を継続的に維持しかつ小細工の必要もなく相応の火砲を弾ききる重防御力は駆逐艦である俺にはどうあって持ち得ない代物。

 なにより、こいつに対して心配も懸念も必要ない。

 あるのはいつ背中から撃たれても対応できるよう警戒だけ。

 俺が常にどうしても捨てられない仲間への心配を持つこともなく全力でただ敵へと力を向け続けることが可能な相手。

 それが殺しても足りない憎い大和だと言うことが皮肉すぎて笑えやしない。 

 ああ、全く。

「なんでこんなことになったんだ!?」

 やり場の無い感情を全て乗せ、俺は降り頻る爆弾の雨に弾幕を叩き込む。

 気に入らない。

 気に入らない。気に入らない。

 気に入らない。気に入らない。気に入らない。

 私は常に一人で勝ってきた。

 仲間なんて必要ない。

 寧ろ足手纏いでしかない。

 だが今はどう?

「いい加減ワンパターンなんだよ!!」

 私の腕を奪い誇りを踏みにじった憎たらしい|駆逐艦《小魚》が隣に立つだけでどうしてこうもやり易いの?

 この世の外の技術を奮う駆逐艦によりしつこく集る艦載機が愉快な速度で墜ちていく。

 黒い霧から生み出された錨が鎖により手繰られ艦爆を叩き落とし砲身を束ねたガトリングが爆弾を一つ残らず撃ち落とす。

 臍を噛むほど悔しいけど防空はこの駆逐艦に及ばない。

 なんて無様。

 最強であれと生み出された私はこの駆逐艦に多くのもので劣っている。

 先に起きた遭遇戦で私は思い知らされた。

 唯一つの例外を除きどんな相手でも沈めきってきた私の砲を正面から受け止められた。

 駆逐艦が従えていた島風の連装砲は防がねば削られるほどの火力を内包していた。

 たかが駆逐艦を私は脅威だと認識してしまった。

 ああ、認めよう。

 この駆逐艦は私を殺しきれる船だと認めるわ。

 だからこそ、やり易い。

 駆逐艦の露払いがあるから私はただ前に進めばいい。

 駆逐艦が相手を引き付けるから敵をただ沈めればいい。

 余計なことを考える必要もなく、私は|私《戦艦大和》の全力を奮えばいい。

 だからこそ、気に入らない。

 気を遣る必要も守る必要もなく、背中を任せる事が出来るものが今更居たことを知ったことが気に入らない。

 そんなものはもう必要ない。

 だから殺す。

 今倒すべき敵を倒したら次は駆逐艦を殺す。

 私は……

 〜〜〜〜

 たった二隻。

 対して敵も二体。

『もっとだ!!

 もっと愉しませてくれ!!』

 全長200メートルにも至る巨体から哄笑が大気を震わせおぞましい邪神が吼える。

【#$$%^^==-@*;`[*+/.-))】

 心が弱いものならその咆哮だけで魂が砕け散るだろう。

 だが、二隻はそんなものに屈することはない。

「あっちを先に始末するわ。時間を稼ぎなさい」

 海を割る勢いで迫るクトゥルフに向け大和が舵を切る。

 

「やなこった」

 進路をそのままに大和の要求を蹴り飛ばす。

「テメエが来る前に仕留めてやる。

 せいぜい悔しがれ」

「アレは泊地型。対地装備も無しに仕留めるのは無理よ」

「問題ねえ」

 そう言うとイ級は魚であれば腹鰭が有るだろう位置を展開する。

「『WG42』。

 そんなものどこで手に入れたの?」

 ドイツ製の貴重な対地装備につい訊ねる大和にイ級は溜め息を吐く。

「そいつは俺が聞きてえよ」

 木曾と酒匂が何処からか徴収した高性能装備群の中に混じっていたロケットランチャーを構えたままイ級は加速する。

 大和に足並みを揃える必要がなくなり最高速度へと突入したイ級に『混沌』は狂笑する。

『まずは君からか!

 さあ、沈んでおくれ!!』

 割れた肌の奥から狂気を振り撒き島全体が鳴動するほどの砲撃を飛ばす。

「誰が、沈むか!!」

 絨毯爆撃にも比肩する飽和射撃の雨をイ級は加速と減速を巧みに手繰り細い糸のような隙間を縫い駆ける。

 そのまま接敵を続け、WG48の有効射程に入ったのを確認したイ級は『しまかぜ』達と共にロケットを放った。

「喰らえ!!」

 『しまかぜ』『ゆきかぜ』『ゆうだち』の三体による飽和射撃と共に白線を引きロケット弾が『混沌』に直撃して爆炎を上げる。

『痒い痒い。

 そんなもので僕を倒せると本気で思っているのかい?』

「思ってるに決まってんだろうが!!」

 再装填を終えたロケット弾が再び飛翔し『混沌』を焼く。

「百だろうが千だろうがテメエがくたばるで叩き込んでやるよ!!」

 次々と着弾する砲弾の雨は狙うまでもなく『混沌』の巨体を穿ち少しずつでもダメージは蓄積されている。

 そも、例え本当に無駄であろうとイ級に止める選択肢はない。

 正面からの殴り合いの装丁となる中、突如後方から砲弾が飛来。

 『混沌』に着弾すると凄まじい爆発を発てた。

『なにぃぃぃっ!?』

 先程までの余裕も消え本気で驚愕を露にする『混沌』。

「弾着確認!!

 効果有りですわ!!」

 砲撃が放たれた場所、北方棲姫の艤装の上で観測を担当した熊野の声が響く。

 しかし『混沌』への砲撃を担当した山城は気に入らなそうにぼやく。

「ああ、もう。

 ほんっっっと、不幸だわ」

 自分の艤装にて砲撃の余韻を立ち上らせる|砲《・》に山城は堪ったものではないと不満を溢す。

「なんで戦艦が|列車砲《ドーラ》の真似事しなきゃならないのよ」

 R戦闘機に含まれながらも飛行能力は皆無でイ級達から存在を忘れ去られていた『キウイベリー』がこれ迄の挽回を果たそうと言うかのようにギャインギャインと波動砲のチャージ音を唸らせた。

『おのれぇぇい!?

 何て無粋な真似をするんだ!!』

 まるで駄々を捏ねる子供のように喚き砲撃が来た方向へと戦闘機を飛ばそうとする『混沌』だが、それをイ級が黙って見ている筈はない。

「余所見してんじゃねえ!!」

 『しまかぜ』達と共に今飛び発とうとしている戦闘機目掛け砲撃を叩き込む。

 次々と着弾する砲弾に暖気中の戦闘機は簡単に爆発し爆発は連鎖的に広がり飛行甲板を炎に包む。

『猪口才な真似を!?』

 煌々と燃え上がるルルイエと共に炎に焼かれながら『混沌』がイ級に砲を向け放つ。

 立て続けに起きた水柱の隙間を掻い潜るイ級だが、彼我距離の近さが完全な回避を許さず至近弾が身を削り畝る海流が足を乱れさせる。   だがしかし、それとて止まる理由にならない。

「『ゆきかぜ』!!」

『しれぇ!!』

 イ級の呼び掛けに『ゆきかぜ』は腹部を展開して魚雷を投射。

 放たれた魚雷は数十秒後に自爆して水柱を発てるとその勢いで海流を乱し、イ級はその流れに乗り加速すると更なる砲弾を回避する。

 そのままイ級は反転しロケット弾を叩き込む。

 

「行けぇっ!!」

 直後、ロケット弾の着弾を確認するより先にイ級の第六が警鐘を鳴らす。

 ただの回避では間に合わないと叫ぶ本能にイ級は即座にクラインフィールドを操作しロケットブースターを形成させると一気に加速して離脱。

 直後、イ級の居た場所に直上から爆撃機が本体ごと海面に着弾し爆発。

「クソッタレが!?」

 離脱を考えないカミカゼ地味た無謀な攻撃にブースターを解除しながらイ級は吐き捨てると再び『混沌』を見据える。

『やるじゃないか。

 だけど、こんなものじゃないはずだ!!』

 鎮火を終え再び『混沌』から飛び立つ航空機の群れがイ級に群がる。

「勝手にほざいてろ」

 ファランクスを全力稼働させ膨大な数の航空機を近付けまいと攻撃を『しまかぜ』達に任せ弾幕を打ち上げるイ級。

 空中に数多の爆炎が吹き上げるなか二発目の支援砲撃が『混沌』に着弾。

 衝撃で『混沌』の巨駆が揺らぐもすぐに建て直しイ級へと攻撃を再開する。

 天秤に傾く気配はなく、未だ終わりは見えない。